ペットシッターをはじめて20年以上が経ちます。
その間、関わってきた猫たちの中で、泌尿器系のトラブルを抱えた子は少なくありませんでした。

以前は「尿路結石=ストルバイト」という印象がありました。
でも、ここ数年でその印象がじわじわと変わってきています。

シュウ酸カルシウム結石の子が、明らかに増えている気がする。

気のせいかと思っていたのですが、調べてみたら気のせいではなく、臨床獣医師の間でも、猫の尿石症においてシュウ酸カルシウム結石が増加しているという実感は非常に強く、共通の認識となっているそうです。

結石の「主役」が入れ替わっていた

UC Davis(カリフォルニア大学デービス校)の泌尿器石分析ラボの調査によると、2005年から2018年にかけて、猫のシュウ酸カルシウム結石の割合は増加傾向にあり、ストルバイト結石と拮抗する状況が続いています。

1980年代はストルバイトが全体の80%以上を占めていたというのですから、かなりの逆転劇です。

なぜこうなったのか。

その背景に、フードの変化があることが指摘されています。

ストルバイト対策フードが、別の結石を生んだ可能性

1990年代以降、ストルバイト結石の対策として「マグネシウム制限・尿酸性化」フードが広く普及しました。

これは当時の問題に対する、当時なりの合理的な判断だったと思います。

ただ、ここに皮肉な構造があります。

ストルバイトを防ぐために尿を酸性化する → シュウ酸カルシウムができやすい環境になる。

しかも、マグネシウムには尿中のシュウ酸と結合して結晶化を防ぐ保護的な働きがあるため、マグネシウムを制限することがシュウ酸カルシウムのリスクを高める、という逆説も生まれます。

もちろん、フードだけが原因ではありません。

遺伝的素因、年齢、性別(去勢オスは特にリスクが高い)、肥満、ストレスなど、関わる要素は多岐にわたります。

また、マグネシウム制限フードの普及が結石のある種の素因を持つ猫を「あぶり出した」だけ、という見方もあります。

ただ、「ストルバイト対策フードが長期的にはシュウ酸カルシウムのリスクを上げた可能性がある」というのは、現在の研究でも否定されていない視点です。

「両方対応」療法食の中身

猫の結石対策フードには、「ストルバイトにもシュウ酸カルシウムにも対応」と表示されているものがあります。

これを見て「どちらでも安心」と思ってしまいがちですが、少し立ち止まって考えてみると。。。

まずそもそも、シュウ酸カルシウム結石はフードで溶かすことができません

ストルバイトは適切な療法食で溶解できますが、シュウ酸カルシウムは外科的な除去が必要で、フードにできるのは「新たな結石を作りにくくする」「再発を遅らせる」ことだけです。

では「両方対応」とは何に対応しているのか。

実際の設計を見ると、ストルバイト対策とシュウ酸カルシウム対策、それぞれに別の成分で対処しながら、pH を中性付近に保つというバランスを取っています。

つまり「どちらも完璧に防げるわけではなく、どちらかに傾けすぎないようにしたフード」というのが正直なところです。

飼い主として知っておきたいのは、このことと、もう一つ”結石の種類を確認してからフードを選ぶ”という順番です。

「尿石症です、これを食べさせてください」だけで終わらず、「どちらのタイプですか?」と聞くことが、長い目で見て大切になります。

水を飲ませることの大切さと難しさ

どちらの結石においても、尿を希釈することが再発予防の基本中の基本です。

・ウェットフードへの切り替え
・給水器の設置
・容器の素材や置き場所を変える
・容器を増やす
・温水にする

……様々な工夫があります。

ただ、現場でお世話をしていて正直に思うのは、これが思うようにいかない子が少なくないということです。

ウェットフードを受け付けない子、給水器に興味を示さない子、環境が変わると飲水量がガクっと落ちる子。

「水を飲ませればいい」というのは正しいのですが、実践できるかどうかはまた別の話です。

体内のミネラルバランスを整えるという視点

ここからは、私自身が長年実践していることで、効果を保証するものではなく、あくまで「こういう視点もある」という話として読んでもらえればと思います。

フルボ酸・フミン酸という物質をご存知でしょうか。

土壌中の有機物が長い年月をかけて分解・変換されてできた天然由来の成分で、微量ミネラルの吸収を助けるキレート作用や、腸内環境への好影響が研究されています。

私は自分自身にも、飼い猫にも、5年以上ごく少量を水やフードに混ぜて使い続けています。

「病気を治す」ものとしてではなく、「体内環境を整えるためのメンテナンス」として。

今のところ、私の飼い猫達は泌尿器系の病気にかかったことがありません。

たまたま素因を持たない子ばかりが集まったのか、それとも微量ミネラルがちゃんと働いてくれているのか、これは調べようがないので分かりません。
結果としてそうだということです。

なぜ結石との関連でフルボ酸に興味を持ったかというと

試験管内の実験ではありますが、フルボ酸がシュウ酸カルシウムの結晶に作用して溶解を促す可能性を示した研究があること。

また腸内でのミネラルバランス調整が、尿中のミネラル過飽和を緩和する経路として理論的に筋が通っているからです。

要するに、フルボ酸のキレート作用によってシュウ酸やカルシウムの一部と結合して、腸の段階でミネラルの吸収を整えることで、血液への吸収を減らす可能性があるということです。

もちろん、試験管の中での話と生体内での話は別です。

猫の体内には無数の「変数」があります。

これで結石が「できなくなる」などとは言えません。
ただ、体全体を整えるという意味で、微量ミネラルの補給がペットにとっても意味を持つかもしれない。

そういう可能性として、頭の片隅に置いておく価値はあると感じています。

💡 微量ミネラルとは?

ミネラルには、カルシウムやリンのように比較的多く必要とされるものと、鉄・亜鉛・銅・マンガン・セレンなど、ごくわずかな量しか必要としない「微量ミネラル」があります。

必要量は少ないとはいえ、酵素の働きを助けたり、免疫機能を維持したり、細胞レベルでの代謝に関わったりと、その役割は地味ながら根幹的です。

三大栄養素(タンパク質・脂質・炭水化物)がエンジンだとすれば、微量ミネラルはエンジンオイルのようなもの —なくても動くように見えて、じわじわと影響が出てくる種類のものです。

現代の食環境では、土壌の栄養状態の変化などにより、食事だけでは微量ミネラルが十分に摂れていない可能性が人間でも指摘されています。それはペットも例外ではないかもしれません。

飼い主にできること、まとめ

長くなりましたが、今日お伝えしたいことを整理すると:

知っておいてほしいこと

  • 猫の結石は「ストルバイト」と「シュウ酸カルシウム」で、対処法がまったく異なる
  • シュウ酸カルシウムはフードで溶けない。フードは「再発を遅らせるもの」
  • 結石の種類を確認してからフードを選ぶ順番が大切

日常でできること

  • とにかく水分摂取を増やす工夫を続ける(その子に合った方法で)
  • ストルバイト用療法食を長期継続している場合は、定期的な尿検査で種類を再確認する
  • 体全体を整えるという視点も持ちながら、フード以外のアプローチも考えてみる

完全な解決策はまだ研究途上の部分も多い領域です。

だからこそ、「獣医師に任せきり」でも「フードさえ変えれば安心」でもなく、飼い主自身が少し知識を持って関わることが、猫の長期的な健康につながると私は思っています。

追記

この記事をきっかけに、さらに調べてみたい方はPerplexityなどを使って自分なりの問いを立ててみてください。

通常の検索では辿り着きにくい一次情報にも届きやすいです。

ただし、深みにはまると情報の迷子になりやすいのでご注意を(笑)。

まず自分が知りたいことを一つに絞ってから検索するのがコツです。


尚、上記の記事は、個人の実践に基づく考察であり、治療については必ず主治医に相談してください。