AIM薬の登場を前に、私たちが今できることを整理する

「AIM製剤は2026年4月現在、農林水産省への承認申請段階」

このニュースに触れ、改めて情報収集をしていたのですが、調べ始めたら止まらなくなり、これは愛猫家の皆さんにもブログとして発信した方が良いと思い書くことにしました。

ペットシッターを長く続けていると、腎臓病は「猫の宿命」だと肌で感じてきました。

高齢になるにつれて数値が上がり、療法食に切り替えて、補液をして……
その繰り返しを、何度も何度も見てきました。

そのたびに「なぜ猫はこれほど腎臓病になりやすいのか」と思ってきましたが、その問いにようやく科学的な答えが出てきました。

そして今まさに、治療の選択肢が大きく変わろうとしています。

今回は、最新のAIM研究から、私が以前から着目してきたサプリメントの話まで、「猫の腎臓ケア」を体の繋がりという視点でまとめてみます。

猫の腎臓病の根本原因―「AIM」という謎が解けた

猫が腎臓病になりやすい理由として、これまでは「砂漠出身で水を飲まないから」「肉食で腎臓への負荷が高いから」と言われてきました。
これ自体は正しいのですが、それだけでは説明しきれないことがありました。

その答えが、AIM(エーアイエム) というタンパク質にあります。

腎臓には血液をろ過するための細い管(尿細管)があります。
細胞の死骸などのゴミが溜まってここが詰まると、腎臓の機能が落ちていきます。

通常はAIMが「掃除してください」という目印をゴミにつけ、体内の掃除役(マクロファージ)が片付けてくれます。

ところが、猫のAIMは別のタンパク質と強力に結合しすぎていて、いざという時に動けません。

ゴミに目印をつけられないまま、毎日少しずつ、確実に尿細管が詰まり続ける。
これが、猫が生まれながらに背負っている「目詰まりの宿命」です。

犬や人間のAIMはきちんと機能するため、猫ほど腎臓病が多くありません。
猫だけがこれほど腎臓病を患う理由が、ここにありました。

2026年4月、ついに承認申請へ

その宿命を変えようとしているのが、AIM製剤(注射薬)です。

機能しない自前のAIMの代わりに、「しっかり働くAIM」を外から注入することで、詰まったゴミを掃除し、腎機能の維持・改善を狙う治療です。

2026年4月、開発元から農林水産省への製造販売承認申請が出されました。
正式な承認まではもう少し時間がかかりますが、実用化は目前です。

これは単なる「新薬の登場」ではありません。

これまでの腎臓病治療は「残った機能をいかに守るか」という守備一辺倒でした。
AIM製剤は「詰まりを解消して通り道を確保する」という、攻めの治療への転換点です。

完治するわけではありません。
でも「進行を遅らせることしかできなかった」という状況が、変わります。

腎臓と心臓は運命共同体

ここで少し視点を広げたいのですが、腎臓病のケアを考えるとき、心臓も一緒に考える必要があります。

尿細管が目詰まりすると、腎臓は「ろ過できていない」と判断し、血圧を上げるホルモンを放出します。
心臓がフルパワーで血液を送り出し続ける状態が続くと、心臓そのものが傷んでいきます。

反対に、AIMでゴミを取り除いて通りが良くなると、身体は血圧を無理に上げる必要がなくなります。
腎臓の掃除が、巡り巡って心臓の負担を下げることに繋がるのです。

ここに、よく使われる降圧薬(フォルテコールなど)についての疑問が生まれます。
「身体が自然に血圧を上げようとしているのに、それを薬で抑えるのは矛盾しているのでは?」という問いです。

これは実は、非常に本質的な疑問です。

身体が血圧を上げるのは、今この瞬間をしのぐための応急処置です。
ただ、高圧洗浄を続けることで、まだ生きているフィルター(糸球体)まで壊れていく。
降圧薬は「今すぐの排泄効率」よりも「残っている腎細胞の延命」を優先した選択です。

AIMはこの矛盾を、根本から解消する可能性があります。
身体が無理に血圧を上げなくて済む状態を作るから、です。

今できること――水際での多段階防御

AIM製剤の承認を待つ間も、毎日のケアで「ゴミを減らす」「毒素を水際で止める」ことはできます。
私が複数の成分を組み合わせる「ポートフォリオ」という発想で考えているのは、これらです。

フルボ酸

私が以前から注目してきた成分です。一般的な活性炭が「何でも吸い取る掃除機」だとすれば、フルボ酸はキレート作用によって「有害なものを出し、必要なものを届ける」賢い運び屋です。

重金属などをキレート(挟み込んで無害化)し体外へ排出する一方で、必要なミネラルをイオン化して細胞へ届けます。体内の「土壌」を整えるようなアプローチで、副作用が少ないのが特徴です。

まだサプリメント扱いで、医薬品としての規格化が難しい素材です(天然由来のため産地・製法による品質差が大きい)。でも理にかなった働きをすると思っていますし、だからこそ品質にはこだわって選んでほしいと感じています。

活性炭

腸内の毒素を強力に吸着し、便として排出させます。ただし、必要な栄養素や薬も吸着してしまう「諸刃の剣」でもあります。急性期や数値が大きく上がった時期に、タイミングを見計らって使うもの、という理解が適切です。

キトサン

腎不全の進行を加速させる最大の要因は「リン」です。キトサンはカニやエビの殻から作られる不溶性の食物繊維で、胃の中でプラスに帯電し、マイナスの電荷を持つリンを磁石のように吸着して排出します。

食物繊維なので便が硬くなりやすい面があります。水分補給とセットで考えることが重要です。また、薬を飲んでいる場合は2時間ほど時間をずらすのが無難です。

猫の腸は「短くて、排他的」

「腸活」という言葉が一般的になって、犬猫向けの乳酸菌サプリも増えました。
ただ、猫の腸には猫特有の事情があります。

猫の腸は肉食動物として非常に短く、食べ物の通過が速い(12〜24時間)。
さらに、腸内で細菌を攻撃するウイルス(バクテリオファージ)が多く存在しているため、外から入れた菌が定着しにくい環境にあります。

これは、菌を研究している知人の専門家から聞いた話で、腸内生態系の研究として指摘されている点でもあります。

だから、猫の腸活で「ヨーグルトで菌を育てる」というイメージは、少しずれています。

猫に合ったアプローチは、「菌を住み着かせること」ではなく「通り過ぎる数時間の間に仕事をさせること」です。
窒素化合物を分解する特定の乳酸菌や、腸内環境を整えるフルボ酸・水溶性食物繊維のほうが、猫の腸の実態に合っています。

市販の「犬猫用」乳酸菌サプリのほとんどが両用設計なのは、経済的な理由もあるのですが、猫の腸の特殊性がまだ製品に反映されていない、という現実でもあります。

フード選び―「本能」と「数値」のあいだで

「猫は肉食だから高タンパクが良い」という本能への配慮と、「腎臓への負担を減らすための低タンパク」という医学的要請。

これは矛盾しているように見えますが、ステージによって正解が変わると考えるとすっきりします。

腎機能が正常な時期は、良質なタンパク質で筋肉を維持することが大切です。
この段階で過度にタンパク質を制限すると、筋肉が落ちて代謝や免疫力が下がります。
「グレインフリー=悪」ではありません。

ただし、腎機能が落ちてくると(SDMAの上昇など)話が変わります。

タンパク質を代謝した際に出る窒素化合物を腎臓で処理しきれなくなり、それが毒素として血液中に溜まります。
また、肉にはリンが豊富に含まれているため、リンを制限するためにタンパク質量もセットで見直す必要が出てきます。

「量より質」という視点も大事です。

粗悪なタンパク質は消化効率が悪く、ゴミ(老廃物)が多く出ます。
アミノ酸スコアの高い素材を選ぶことで、同じタンパク量でも腎臓への負担を抑えられます。

このステージの切り替えには個体差があります。

だからこそ、定期検診のSDMAやクレアチニンの値を、「病気を探すアラーム」としてではなく、「今のケアが合っているかを確認するナビゲーション」として使ってほしいと思っています。

身体はパーツの集まりではない

最後に、私がいつも思っていることを書きます。

腎臓の数値が悪くなると、腎臓のことだけを見てしまいがちです。

でも、
腸で毒素をブロックすれば腎臓の負担が減り、
→ 腎臓の掃除ができれば心臓が休まり、
→ 血圧が安定すれば全身の血流が整う。
(ここでは主に腎臓にフォーカスしていますが、この流れは肝臓の負担も下げます)

身体のあちこちは、全部繋がっています。

AIMという新しい治療が近づいてきた今こそ、「断片的なケア」から「全体を整えるケア」へと発想を広げてほしいと思います。

何かひとつの薬やサプリに頼るのではなく、今のその子の状態(数値・年齢・体質・食欲)に合わせて、複数の手段を組み合わせる。

その舵取りを、飼い主さん自身が主導権を持ってできるようになることが、私がこの仕事を通じて一番伝えたいことかもしれません。

<手 段主なターゲット注意点
AIM製剤(承認申請中)尿細管に詰まった細胞の死骸承認後に動物病院で
使用可能に
フルボ酸重金属の排出+ミネラル調整品質差が大きい
成分表示を確認
活性炭腸内の毒素全般栄養・薬も吸着する
使うタイミングに注意
キトサン食事中のリン便秘に注意
水分補給とセットで
水溶性食物繊維腸内環境の調整猫の短い腸に
比較的向いている
療法食
(低タンパク・低リン)
腎臓への負担軽減腎機能が落ちてからの
ステージで導入

※AIM製剤は2026年4月現在、農林水産省への承認申請段階です。正式承認までは時間がかかる見込みです

補足

●猫の乳酸菌について

「猫の腸に定着しやすい菌」を前提に設計された製品は、正直まだ非常に少ないそうです。
平たくいえば、乳酸菌については「腸で働いてくれればラッキー、口内環境にもいいし」というぐらいが期待値の置き方としては現実的です。

猫の口内は歯周病菌など悪玉菌が多く、そこへの作用も一定の意味はあります。
「過信せず、補助として使う」くらいの位置づけが良さそうです。

●アミノ酸スコアについて

フードのパッケージ情報からスコアを読み解くことはできないので「良質な原材料を選ぶ」という既存の情報やアドバイスには、ちゃんと生化学的な根拠があるり、プレミアムフードのバリューは、結局のところ「素材の具体性と透明性に対してお金を払っている」という理解で良いのではないかと思います。