ペットシッター23年、失敗とハプニング全部盛り
西山 早苗 /

ペットシッターを23年やってきました。
きれいな話だけでは続きません。
失敗も、事件も、笑うしかない出来事も、たくさんありました。
思い出せる範囲で、並べてみます。
深くは語りません。箇条書きです。
これから開業する方には、たぶん参考書より役に立つかもしれません。
私なら開業前に知りたかったので。
笑える話もあれば、今でも忘れられない出来事もあります。
23年という時間には、その両方がありました。
ちなみに、ここには私の失敗もあれば、完全にもらい事故のような出来事も含まれています。
鍵にまつわるあれこれ
- お客様から預かった鍵が、当日、合わなかった。(20年ほど前。飼い主さんから不動産屋に連絡してもらい、なんとか鍵を確保。今なら個人情報の壁でもっと難しかったはず)
教訓
預かった鍵は、その場で必ず開錠チェック。以来、一度も欠かしていません。ちなみに施錠忘れは23年間ゼロです。- 出入口と決めていた勝手口に、お客様がU字ロックをかけて出発。入れず、戸建ての2階の窓から家に入った。おおらかな性格の飼い主さんに救われました。
- 猫が室内で大運動会をして、誤ってU字ロックをかけてしまった。YouTubeで解除方法を調べ、道具を調達して突入。
教訓
猫は何でもやります。「まさか」は起きる前提で、入口は複数確保しておくこと。- お客様が旅行先で鍵を紛失。合鍵をお届けした。(これは私の失敗ではないけれど、こういう出動もある)
天候・災害との格闘
- 台風の大雨。氾濫寸前の川の向こうにお世話先が。欄干に水が迫る橋を、ドキドキしながら車で渡った。
- 同じく台風案件。初日の訪問時、お客様宅の雨戸が飛び、窓ガラスが割れていた。
教訓
災害時の対応範囲と連絡手順は、事前にお客様と決めておくこと。「行けない場合」の取り決めも含めて。- ゲリラ豪雨で道路が冠水。車を乗り捨てて、歩いて自宅に帰った。
- 真冬の吹雪。チェーンなしで走ったらとんでもなく危険で、路肩に停めて、かじかむ手でチェーンを装着した。
- 郊外の田んぼ道で犬を散歩中、いきなりの雷雨。遮るもののない場所で、雷が本当に近かった。
教訓
天気は「行く前」に読む。この仕事に「今日は休み」はないからこそ、装備と判断力が命綱です。- コロナ禍。失敗ではないけれど、事業継続の最大の激震でした。
ペットのお世話代行サービスは今後もビジネスとして成り立つか——コロナ禍とAI時代を経て考えたことコロナ禍に翻弄された経験と、AIの台頭という次の変化を前に、ペットシッターという仕事の将来を考えました。需要はある。でもそれだけでは十分ではない。23年の視点から。...
動物たちとの奮闘
- お世話する猫が凶暴すぎて、透明ビニール傘で足元をガードし、水鉄砲持参でお世話した。(水鉄砲は後にエアスプレーに進化。更に現在は「心を凪にすること」で対処。)
- シッターを始めて数年の頃。海外から取り寄せたという100万円級のワンコが、灯油販売カーのスピーカー音声に驚いて逃走。
複数頭を同時に散歩させていて、リードが手から抜けた。(犬は自力で家に帰っていて、事なきを得ましたが、「私、終わった」と思った出来事でした。)
教訓
多頭同時散歩は、リスクの掛け算。以来、頭数と組み合わせの判断は慎重になりました。- 新米の頃、40kg超の犬に舐められて、道路のど真ん中で座り込みストライキをされた。
人間とのトラブル
- 犬の散歩中、様子のおかしいオジサンにいきなり散歩させていたワンちゃんを蹴られ、道端で大口論に。(この時は怒り心頭でした。)
- 飼い主さんの了解を得て駐車場に停めたら、飼い主さんの知人に「勝手に停めるな!」と怒鳴られ、これまた口論に。
- 路上駐車の罰金、これまで4回。
(近くにコインパーキングがなかったのです。以来、歩数計を持ち歩き、健康のため一日何歩歩いたかをモチベーションにしています。笑)
教訓
駐車問題は、この仕事の恒常的課題です。訪問前に「どこに停めるか」を必ず確認・合意しておくこと。罰金4回は、その授業料でした。- 高齢で持病のある猫のお世話を終えた翌日。帰宅した飼い主さんから「猫が死んでいる、一体何をしたんだ!」と怒鳴られた。
この件について
救いになったのは、毎回のこまめな報告でした。当時は紙の報告が主流。記録がすべてを語ってくれた。この経験は別の記事で、あらためて書くつもりです。事件簿・番外編:別犬騒動
- お世話していたワンちゃんが譲渡されることになり、お別れした矢先、譲渡先から「脱走した、すでに数日経過」の知らせ。その日の夜、スタッフ総出で捜索に出動。
すると偶然、同じ年恰好・同じ犬種の、少し衰えた犬を発見。
顔つきが変わっている気がしたものの、状況的に間違いないと思い、状態が悪そうだったので夜間救急病院へ直行。明るい照明の下でまじまじと見て、、、別犬では?の疑いが確信に。
結果、別犬でした。当の脱走犬は無事捕獲の知らせ。苦笑。
この話の顛末
私が保護した老犬は、痴呆症でフラフラと脱走していたのでした。飼い主さんを探し、無事にお家へ。夜間救急の費用は、私の早合点で連れて行った手前なんとなく請求できず、骨折り損のくたびれ儲け。でも老いた痴呆犬を一頭、無事に保護できた。そう納得させました。だってねぇ、仕方ないですよね。こんなこともあるんです。そして、命と出会ってしまう
- 犬の散歩中、亡くなっている猫を見つけて、葬る手配をした。
(事故猫には以前はかなり頻繁に遭遇。時間の許す限り対処を心がけています。) - 豪雨の散歩中に子猫を保護。うちの子になった。
- 真夏の海辺の松林で、カラスにからかわれている子猫に遭遇。助けてうちの子になった。
- お客様宅の玄関前に集まってきた外猫の中に、顔が陥没した猫がいた。迷いに迷って保護し、病院へ。うちの子として迎えた。(この子の話は、いつか別の記事で書きます)
- お客様のお宅に向かう途中、聞こえてくる子猫の声。目が合うと駆け寄ってきて、何をどうしても私から離れず、うちの子へ。
- お客様のお宅から帰る際、車に乗り込んでくる子猫。何度降ろしても乗ってくるので諦めてうちの子へ。
- 夕暮れの6車線道路。どこからともなく子猫の声。中央分離帯の植え込みで、身動きできず泣き叫んでいた。保護活動の師匠の力を借りて保護し、うちの子に。(この子の話も、いつか)
- 運転中、前方高めの土手から服を着せられたノーリードの高齢の柴犬が転がり落ちてくるところを目撃。車を停め、現地に向かうも犬はどこにもおらず、、。え?あれは幻?
(誰かが救ってくれたと信じてその場を後にしました。) - 飼い主さんが亡くなられたり、複雑な事情で引き取った子は5匹以上。
(負担を請け負うというより、事情を汲み、自発的に私が引き受けた結果です。人と人、人と動物の間にもどうしても情が生まれるのです。)
出会いは、事故のようなもの?それとも必然?。 向こうからやってきます。
おわりに
並べてみると、我ながらよく続いたと思います。
でも、どれひとつ無駄になっていません。
鍵のチェックも、天気の読みも、報告の習慣も、 全部、失敗やハプニングが教えてくれたことです。
「何も起きないこと」が理想の仕事ですが、現実はそうはいきません。
問題なしにはできない仕事です。 だからこそ、23年分の中身がある。
とはいえ、完成はしていない。
未完のシッターが完成系を目指し、また新たな一年を迎えます。
24年目も、たぶん何か起きます。(笑)
できれば笑って話せる出来事だけで済みますように。

【飼い主の皆様へ】
どんなプロでも、物理的な壁や災害、予期せぬ動物の行動の前では無力になる瞬間があります。だからこそ、シッター選びにおいて重要なのは、その人が「何ができるか」よりも、「何が起きた時にどう連絡・連携・対処してくれるか」というリスク管理の姿勢を確認することです。私の失敗の歴史が、皆様の大切なペットと、皆様を支えるシッターとの「より良い協力関係」を築くためのヒントになれば幸いです。
ABOUT ME
西山 早苗
約12年間の会社員経験を経て、2003年に福岡市東区にてペットシッターMojo Mojoを開業。気づけば、地域で最も長く続くペットシッターの一つになりました。 23年間のシッター業務、保護活動、そしてトータル30匹を超える飼い猫たちとの日常を通して感じたこと——看取りや介護、動物たちの心身の健康、飼い主さんとの関わりで気づきを得ました。 長年の現場経験をベースに、時代の変化も取り入れながら、飼い主の皆さまのお役に立てるよう日々取り組んでいます。
BLOG:http://mojomojo7.com









