仕事、楽しめていますか?

「動物が好きだから、この仕事を選びました。」
ペットシッターに限らず、動物に関わる仕事をしている人なら、一度はそう口にしたことがあるのではないでしょうか。
私もその一人です。
犬や猫が好きで、その命のそばにいたい。
開業動機は他にもありますが、どうせやるなら”自分の好きな分野で”と思ったのが大きな理由でした。
好きなことを仕事にできる人は、思っていたより少ないのかもしれません。
子どもが好きで保育や教育の仕事を選ぶ人。
本が好きで、書店や出版に関わる仕事を選ぶ人。
そう考えると、私は恵まれた選択をしたのだと、後になって気づきました。
もちろん、仕事である以上、収入は必要です。
責任もありますし、経営という現実から目を背けることもできません。
けれど、ある時期の私は、そんな原点を見失いかけていました。
この記事は、「年収1000万円~の記事」に書ききれなかった私の経験であり、思いです。 前記事が長くなってしまったので、二つに分けて書いています。
仕事は順調。でも、、、。
前記事で書いた、あの忙しかった時期。
経営という面では、値上げに踏み切れなかったことや、ノイローゼ気味になったことという形で表れていました。
でも、もう一つ、あの頃の私が静かに失っていたものがありました。
仕事はありがたいことに増え続けていました。
スタッフと二人体制で走り回り、一日に何件ものお宅を訪問する毎日。
休みはほとんどなく、頭の中は常に次の予定でいっぱいでした。
あの頃の私にとって、犬や猫たちは「大切な存在」である以前に、「次に向かう訪問先の仕事」になってしまっていたように思います。
手を抜いたことはありません。
一件一件、ちゃんと向き合ってはいました。
でも、心のどこかで問いかける自分がいました。
「私は、この仕事を楽しめている?」と。
好きだったはずなのに
動物が好きで始めた仕事です。
それなのに、当時は好きという気持ちを味わう余裕がありませんでした。
目の前の予定をこなし、お客様からの問い合わせに対応し、事務仕事を終え、また次のお宅へ向かう。
気がつけば、一日が終わっています。
仕事にするということは、そういうことなのかもしれません。
どんな仕事でも、理想だけでは続きません。
だから私は、忙しくなること自体が悪いとは思っていません。
売上が上がることは、事業として素直に喜ばしいことです。
大きく稼ぐために、初心の優先順位を一時的に下げる。
それも、経営者としての一つの選択だと思っています。
ただ一つだけ思うことがあります。
余裕がなくなると、人は「なぜこの仕事を選んだのか」を忘れてしまう。
これは、私自身が身をもって知ったことでした。
人に気を遣う動物たち
最近は少し気になることがあります。
飼い主さんに気を遣っているように見える犬や猫に出会うことが、以前より増えたように感じるのです。
もちろん、それも私の受け止め方の問題かもしれませんし、気のせいかもしれません。
でも、その姿を見るたびに胸が痛みます。
そして、思うのです。
もしかすると、私はその子たちの中に、自分を見ているのではないかと。
動物達が気遣いにも似た振舞いをするなんて。。。
その気遣いに似た行動が、歓びからくる行動ならまだしも、ある種の諦めのような、気持ちをごまかす代替行動の一つとして身に付けた振舞いだとするなら悲しすぎると。
自分を抑圧し、後回しにし続ければ、どこかで心は乾いてしまいます。
それは人も、動物も、きっと同じなのだと思います。
余白も、仕事の一部
今なら分かります。
余白とは、仕事を怠けるための時間ではありません。
仕事を長く続けるために必要な時間です。
少し立ち止まること。
疲れていたり、焦っている自分に気づくこと。
「私は、なぜこの仕事を選んだんだっけ?」
そう問い直す時間を持つこと。
それもまた、プロとして仕事を続けるための大切な営みなのだと思います。
初心は、忙しい時期にはいったん脇に置かれることがあっても、消えてしまうわけではないようです。
むしろ、フェーズが変わるたびに、思わぬところで自分を支えてくれることがある。
そんな気がしています。
私は、まだこの分野から離れられない
遠くない将来、私もペットシッター業を引退する日が来るでしょう。
体力・気力を考えれば、それは自然なことだと思っています。
でも、不思議と動物たちから離れる未来は想像できません。
これからも、動物たちと、その命を大切に思う人たちのそばにいたいと思っています。
動物たちは、何も語りません。
けれど私は、彼らからたくさんのことを教えられました。
彼らは教えようとしていたわけではありません。
ただ、淡々と死ぬその日まで生きる姿を見せてくれていただけです。
私は、以前も今も、動物たちを人生の師のような存在だと思っています。
教えられることが本当に山ほどあります。
そしてそれは、年を重ねるほどに深みが増しています。
もしこの文章を読んでくださっている方が、少し疲れていたり、仕事に追われていたりするなら、
――それがこれから開業を考えている方でも、すでに現場に立っている方でも
――少し立ち止まって、自分に問いかけてみてください。
「私は、この仕事を楽しめているだろうか。」と。
その問いへの答えは、案外、言葉ではなく、あなたのそばにいる動物たちが静かに教えてくれるのかもしれません。









