猫の粗相が治らない。それでもいいと思えるまで

—ネットの情報を片っ端から試して疲れてしまった飼い主さんへ—
猫の粗相。
猫と暮らしている方なら、一度は悩んだことがあるかもしれません。
「今までちゃんとトイレでしていたのに、突然布団におしっこをするようになった」
「トイレを増やしてもダメ」
「猫砂を変えてもダメ」
「ネットで見つけた方法を片っ端から試しているのに、またやられた……」
猫の粗相対策について調べれば、情報はいくらでも出てきます。
おすすめのトイレ、猫砂、消臭剤、防水シーツ、フェロモン製品、サプリメント、ストレス対策。
それだけ多くの情報があるということは、それだけ多くの飼い主さんが悩んでいるということなのでしょう。
私はペットシッターとして23年間、たくさんの猫を見てきました。
そして自宅でも、長年たくさんの猫と暮らしてきました。
もちろん、粗相にも散々悩まされました。
今回は「これをすれば猫の粗相が治ります」という話ではありません。
むしろ、その反対です。
やることをやっても、治らないことはある。
そうなったとき、対策を増やすのではなく、問いの立て方そのものを変えることになりました。
長年猫と暮らしてきて私がたどり着いた、少し力の抜けた粗相対策について書いてみようと思います。
突然の粗相なら、まず身体の問題を考える
これは最初に押さえておきたいところです。
今まで普通にトイレを使っていた猫が突然粗相を始めた場合、私はまず身体的な問題を疑います。
膀胱炎や尿石症などの尿路疾患をはじめ、腎臓の病気や糖尿病など、尿量や排尿回数が変化する病気もあります。
高齢猫なら、関節や腰などに痛みがあってトイレに入りづらくなっている可能性もあります。
便の粗相であれば、便秘や下痢、排便時の痛みなど、また違った原因も考えられます。
何度もトイレに行く、血尿がある、排尿時に痛そうにする、尿がほとんど出ていないなどの様子があれば、粗相対策以前の問題です。
ここは私たちシッターが診断するところではありません。
「粗相=行動の問題」と決めつけず、
身体的な異常の可能性を考え、
必要なら獣医師に診てもらう。
まずはここからだと思います。
環境を見直す。情報はもう十分ある
病気ではなさそうだと分かったら、次に考えるのはトイレや生活環境です。
清潔さ、数、猫砂の種類、トイレの形や大きさ、設置場所。
高齢なら縁をまたぐ負担、多頭飼育なら他の猫との干渉。
そして最近、引っ越しや家具の移動、来客、新しい家族や動物、留守番時間の変化など、
環境に変わったことがなかったか。
人間には些細に思えることでも、猫にとってどうなのかは分かりません。
思い当たることがあれば、一つずつ試してみればいいと思います。
ここから先
——トイレを変える、砂を変える、フェロモン製品やサプリメントを試す、行動面からアプローチする——
という具体的な方法は、検索すればいくらでも出てきます。
ここでは詳しく繰り返しません。
ただ、一つ覚えておきたいことがあります。
原因が分かったとしても、必ず解決できるとは限りません。
原因が分かっても、どうにもならないことがある
これは特に、多頭飼育をしていた私はよく分かります。
長年、私は次から次へと保護猫を迎えていました。
もし当時の猫たちに、
「あなたのストレスの原因は何ですか?」
と聞いたら、
「また猫を連れてくる、あなたです」
と言われても、まったく反論できません(笑)。
猫によっては、本当は一匹で静かに暮らしたかったかもしれません。
飼い主を独占したかったかもしれない。
気の合わない猫と一緒に暮らしたくなかったかもしれません。
仮にそれが粗相の原因だったとしても、では、すでに一緒に暮らしている猫たちをどうするのか。
すべての猫の希望を100%叶えることは、現実にはできません。
愛情だって時間だって、多頭飼育ならどうしても分散します。
できるだけ環境を整える。
それぞれが落ち着ける場所を作る。
できる範囲で個別に関わる。
それでも、どうにもならないものはあります。
「あれもダメ、これもダメ」と考えない
粗相が続くと、飼い主も疲れてきます。
「このトイレもダメだった」
「この猫砂もダメ」
「療法食もサプリも効かなかった」
「また粗相された」
正解を探していると、一つ対策が失敗するたびに「またダメだった」が積み重なっていきます。
でも、少し見方を変えると、
「これは違ったか。じゃあ次」でいいんですよね。
粗相対策の情報が山ほどあるなら、正解を探すためではなく、試行錯誤するための材料が山ほどあると思えばいい。
今度はこれ。
それでもダメなら次はこれ。
猫を観察しながら試してみる。
合わなければやめる。
これくらいの方が、猫も人間もまだ疲れません。
そして最後は、掃除スキルを上げる(苦笑)
いろいろ試しました。
病気も調べました。
トイレも工夫しました。
環境も見直しました。
それでも粗相する。さて、どうしましょう。
私が長年猫と暮らした末にたどり着いた答えは、ずいぶん現実的なものでした。
もう、掃除のスキルを上げるしかない(笑)。
防水シーツを使う。洗いやすいものに替える。
粗相されやすい場所には、あらかじめ対策しておく。
臭いを残しにくい掃除方法を覚える。
洗濯しやすい環境にする。
つまり、
「どうすればこの猫に粗相をさせないか」から、「粗相されても困らない暮らしをどう作るか」へ。
考える対象を猫から人間側へ移してしまうのです。
粗相は続いている。でも、さほど問題ではなくなった
これは「諦めるな」という話でも、「諦めてはいけない」という話でもありません。
ある意味、諦めです(笑)。
でも、私は諦めることが必ずしも悪いとは思っていません。
やれることはやる。
身体の問題なら獣医師に任せる。
環境を見直す。
使える情報は使う。
試せることは試す。
それでも変わらないなら、
この状態のまま、お互い快適に暮らすにはどうしたらいいだろう。
そう問いを変えてみる。
すると不思議なことに、猫は相変わらず粗相しているのに、こちらにとっては以前ほど大きな問題ではなくなったりします。
現象は解決していない。でも、問題ではなくなっている。
そんなこともあるのです。
正解を探していたのは、私だった
私たちは何か問題が起きると、つい正解を探します。
原因を見つけて、正しい方法で対処すれば、問題は解決する。
もちろん、それで解決することもたくさんあります。
だから調べることも、試すことも大切です。
でも、生き物を相手にしていると、それだけではどうにもならないことがあります。
個体差がある。
環境が違う。
性格も違う。
人間側にも事情がある。
原因そのものを取り除けないことだってある。
そんなとき、「まだ正解を見つけられていない」と考え続けると、猫も飼い主も苦しくなります。
だったら、時には問題を見る角度を変えてみてもいい。
粗相をなくすことだけが解決ではなく、
粗相があっても穏やかに暮らせるようになることも、一つの解決法なのではないでしょうか。
振り返ってみると、私は猫の粗相をどうにかしようと、ずいぶんいろいろなことを試してきました。
猫を変えようとしていたのだと思います。
でも結局――
「あなたを変えようとしていましたが、変わったのは私でした。」
(;’∀’)
猫というのは、こういうことを教えるために、ときどき粗相するのかもしれません。
……いや、それはさすがに猫を美化しすぎでしょうか(笑)。
いやー、でも猫様ですからね~。
本記事は身体か行動かを見極める話であり、その先の情報との向き合い方についてはこちらの記事をご覧ください。「情報と付き合う」ブログ一覧









