ペットシッターという仕事の成熟 ① 拡張する仕事の土台

ペットシッターという仕事は、まだ発展途上の職業です。
国家資格があるわけでもなく、明確な職域が定義されているわけでもない。
それでも、この20年あまりで確実に広がりを見せてきました。
かつては「旅行や出張中などの留守番代行」として認識されることが多かったこの仕事は、いまや生活支援の一部へと変化しつつあります。
現場に立ち続けていると、その広がりは肌感覚として分かります。
役割は固定されず、依頼内容は多様化し、専門性は分化し始めている。
ペットシッターという仕事は、単体の職業というよりも、多方向へ伸びる“土台”のような存在なのかもしれません。
今回は、その拡張について整理してみたいと思います。
私が続いた理由は「現場を編集すること」
先日、私はペットシッターの仕事内容を多角的に分解し、構造として整理するシリーズ記事を書きました。
少し硬い内容だったかもしれません。
ただ、あの記事は「これが正解だ」という主張ではありません。
私自身の20年を一度冷静に言語化してみただけのことです。
私にとってペットシッターの醍醐味は、現場を読み、必要な要素を組み立てることでした。
状況を把握し、仮説を立て、実行し、結果を検証する。
良い経験も、うまくいかなかった経験も、すべてが蓄積され、自分の精度が上がっていく。
そのプロセス自体が面白かった。
だから20年続いたのだと思います。
もう一つ、後から思うことがあります。
私の着眼点や現場での組み立て方が、結果的にお客様の求めていたことと重なっていたのかもしれないということ。
特別なことをしていた感覚はありません。
ただ、「このご家庭にとって何が一番安心か」を考え続けていただけです。
それが支持という形になって継続に結びついたのだとしたら、ありがたいことだと思っています。
サービス業として当たり前のことを積み重ねただけですけど。。
シッターの在り方は一様ではない
長くこの業界を見てきて感じるのは、ペットシッターという仕事の入り口は実に多様だということです。
- シッター業を「次の展開を決めるためのプロセス」と位置づける人
- 開業当初から保護活動を視野に入れ、無理なく両立している人(私の師匠がそうでした)
- 災害時や急変時のリスクヘッジを専門的に学ぶ人
- 代替医療を深めていく人
- 経験を活かしてペット輸送に取り組む人
- アニマルコミュニケーションに惹かれる人
実にさまざまです。
対象が人か動物かの違いだけで、提供できるサービスの幅は非常に広い。
ペットシッターは「単体の職業」というより、多方向へ伸びる土台のような存在だと感じています。
現場から見える変化
この20年で、明らかに変わったことがあります。
ペットの「位置づけ」です。
以前は「飼う」という感覚が強かった。
今は「共に暮らす家族」という意識がはっきりしています。
現場に立っていると、その変化は肌で感じます。
・体調管理への意識の高さ
・老後をどう支えるかという相談
・万が一のときに備えたいという声
終生飼養という言葉が、特別な理念ではなく、現実的なテーマとして語られる場面が増えました。
・単身世帯の増加
・共働き世帯の常態化
・高齢化
生活の形が変わる中で、ペットシッターに求められる役割も少しずつ広がっています。
「留守中のお世話」だけではなく、安心の一部を担う存在へ。
それは、現場にいるからこそ実感できる変化です。
拡張性のある仕事
この仕事には、
・日常ケア
・教育的サポート
・危機管理
・心理的安心
・終生飼養への備え
など、さまざまな要素が含まれています。
だからこそ、自分の関心を深める方向によって専門性の形は変わっていく。
これからは、広く浅くよりも、小さく深い専門性が評価される場面が増えるでしょう。
ニッチな分野に光が当たる。
現場での相談内容の変化を見ていると、その兆しはすでに始まっていると感じます。
業界はまだ成長途中
ペットシッターという仕事は、まだ発展の途中にあります。
役割は固定されていない。
境界線もはっきりしていない。
だからこそ、自分の興味や得意分野がそのまま次の仕事の形になる可能性がある。
私は「現場を編集すること」が好きでした。
現役シッターの皆さんは、どの入り口に惹かれますか?
どこから入ってもいい。
この仕事は思っている以上に広く、そしてまだまだ余白があるようです。
この仕事には、まだ固定された形がありません。
だからこそ、広がる余地があります。
では、年齢を重ねたとき、この広がりはどのように変化していくのでしょうか。
次の記事では、若さで広がる仕事と、経験で深まる仕事の違いについて考えてみます。




[…] ▶ シリーズ①:拡張する仕事の土台 ▶ シリーズ②:年齢とともに価値が変わる ― シリーズ「ペットシッターという職業の後半戦」完 ― […]