「ペットシッターに向いているのはどんな人ですか?」とよく聞かれます。
動物が好きなことは大前提ですが、それだけで仕事が成り立つわけではありません。

実際にやってみると、求められる能力はペットシッターに限らず、どの仕事にも共通するものがほとんどです。
裏を返せば、これまでの仕事経験は、どんな職種であれ必ずここで活きてきます。

具体的に整理してみます。

現場力

現場力と一言で言っても、中身はいろいろあります。
体力・冷静さ・判断力・責任感・注意力・気配り・観察力・気力・度胸—挙げていくとなかなかの量になりますね。

なかでも体力は土台です。
代わりのいない一人仕事ですから、体調管理に無頓着ではいられません。

私自身、開業してから健康に対する意識が大きく変わりました。会社員の頃とは比べものにならないくらい、自分のからだを気にかけるようになっています。

気力も欠かせません。
真夏・真冬の過酷な天候の日、件数が10件を超えた日の後半、想定外のトラブルが重なった日—そういう時に自分を支えるのは気力です。

「やれる!大丈夫!」と自分に声をかけることを、私は今でもやっています。

度胸も求められます。
長くやっていると避けられない場面があります。
訪問したら動物が昏睡状態だった、低血糖でぐったりしていた、触れることすら難しい状態だった—そういう時に、待ったなしで最善の判断を下さなければなりません。

パニックになりながらも冷静さを心がけ、自分の判断に責任を持って動く。
これは現場経験を重ねながら身についていくものです。力量が試される場面です。

接客力

当たり前ですが、ペットシッターを選んで依頼してくださるのは、犬や猫ではなく飼い主さんです。
事前の打ち合わせから、メール・電話のやり取り、お世話中のレポートまで、すべてが接客です。

中でも私はレポートを特に大事にしています。
単調な報告で終わらせてしまうのは、せっかくの機会を手放すようなものだと思っているからです。

飼い主さんは「自分のペットが今どんな様子か」をとても気にされています。よく観察して、その子らしいエピソードを丁寧に伝えると、それが信頼につながっていきます。

接客力や表現力は、開業前にどんな仕事をしていても磨かれています。
アルバイトでも、パートでも、会社員でも——人と関わってきたすべての経験がここに出ます。

振り返ってみると、無駄だった仕事などひとつもなかったと私は思っています。

事務処理力

ペットシッター業であれば、一般的な事務スキルがあれば十分対応できます。
パソコンの基本操作と、月々の出入金・売上管理、年に一度の確定申告が主なところです。

確定申告は開業当初、簿記の知識ゼロの状態で始めたので正直かなり戸惑いました。
ただ、会計ソフトを使えば入力するだけで提出書類が整います。一度やり切ってしまえば翌年からはずっと楽になります。

税理士に頼むほどの規模でもありませんので、まずは自分でやって覚えてしまう方が結果的には早いと思います。苦手意識が強い方は、有料で人に頼むという選択肢もあります。

顧客リストや売上管理表も、早い段階で作っておくと後々役立ちます。
開業初期から習慣にしておくことをお勧めします。

営業力

開業前、営業はとにかく苦手でした。対面営業なんて極力やりたくないと思っていたくらいです。

それでも仕事を軌道に乗せられたのは、ホームページがあったからです。
これなしに今の自分はなかったと断言できます。

ホームページは作るだけでは機能しません。デザインや構成、言葉の選び方、自分の言葉で書かれているかどうか。

業者が作ったサイトはすぐ分かります。気持ちが伝わってこないのです。
思いをきちんと乗せて作ること、そしてお客様目線で構成を考えること、この二つが重要です。

もう一つ忘れてはいけないのが、人となりも営業ツールだということです。
言葉や行動の端々に、その人のキャラクターは自然ににじみ出ます。

ホームページと人となり、この両輪で信頼は育っていきます。

専門性とキャラクター

長くペットシッターをしていると、仕事を続けるうちに特に興味のある分野が見えてきます。
犬の手作り食、しつけや行動学、アニマルコミュニケーション、自然療法、保護活動——そういった分野に踏み込んでいくことが、他のシッターとの自然な差別化にもなっていきます。

私自身は開業5年目以降、年間休暇が5日以下という状況がずっと続きました。
以前は保護活動にも関わっていましたが、その余裕すらなくなり、休止せざるを得ない時期が長く続きました。
専門分野を深めるどころか、目の前の仕事をこなすことで精一杯だった時期です。

ただ、何も育たなかったわけではありませんでした。
20年を過ぎた頃から、この仕事を俯瞰して見る視点が自分の中に育ってきたと感じています。
現場の積み重ねがあったからこそ、仕事の構造が見えるようになり、それを言葉にして伝えられるようになってきた。長くやってきたからこそ気づけたことが、確かにあります。

どんな能力も、結局は日々の仕事を通して育っていくものです。
スキルが揃ってから始めようと思っていると、いつまでも始められません。

大事なのは、この仕事に対する関心とやる気——それさえあれば、必要なものは後からついてきます。これは開業から23年経った今も変わらない実感です。



※この記事は2020年9月に公開し、2026年6月にリライトしました。

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ABOUT ME
西山 早苗
約12年間の会社員経験を経て、2003年に福岡市東区にてペットシッターMojo Mojoを開業。気づけば、地域で最も長く続くペットシッターの一つになりました。 23年間のシッター業務、保護活動、そしてトータル30匹を超える飼い猫たちとの日常を通して感じたこと——看取りや介護、動物たちの心身の健康、飼い主さんとの関わりで気づきを得ました。 長年の現場経験をベースに、時代の変化も取り入れながら、飼い主の皆さまのお役に立てるよう日々取り組んでいます。