『人間に近いところにいて共に暮らす愛犬、愛猫は、飼い主さんを見て深い部分で語りかけている。時に、彼らの身を通して飼い主さんの今の姿を映し出していることもある。』
これは私の単なる思い込み?と思ったこともありましたが、いや違う、間違いようもないほどに、愛犬、愛猫達は私達飼い主を鏡のように映し出して見せてくれています。
ペットシッターの仕事を通して繰り返し、繰り返し自問した結果、今の私が感じていることを具体的な事例を挙げてまとめています。
愛猫達との接し方に表れていた「ねば・べき」思考
多忙さに飲み込まれる日々
私はこの10年の間に20匹以上の
飼い猫達を看取りました。
猫達の病気は複雑なものも多く
仕事プラス、猫の日々のお世話、
プラス通院治療をしていましたので、
当時の慌ただしさは今振り返ると
恐ろしい程です。
その当時、愛猫達に対して、
「私がちゃんとケアしなくては!」
「保護した私の責任だから」
「ペットシッターなのだから
しっかりしなくては!」
こんな考えで頭がいっぱいでした。
なんて息苦しく、余裕のない毎日
だったのだろうと思います。
私の「ねば・べき」思考は
無意識の内に愛猫達にまで
及んでいたのです。
当時の私は幸いにも仕事は順調で、
切れ間なく依頼が入ってきており
慌ただしい毎日を過ごしていました。
年間を通して休日は5日以下。
これを何年も続けていました。
「お客様に必要とされるなら
多少無理をしてでも頑張ろう!」
そんな思いでどんどん溜まっていく
疲れやデスクワークには目を瞑り、
ひたすら目の前のことに向き合って
いたのです。
それが自営業者としては当然で、
頑張って当たり前!
殆ど疑いもせずそう思っていました。
ちょうどこの頃、10年間一緒に
働いてくれたスタッフが辞めて、
新しいスタッフに仕事を教えていた
タイミングでもありましたので、
忙しさはピークに達していました。
重なる時は重なるものです。
慌ただしい仕事に加え、開業時以来、
動物保護活動もしていましたので、
常時15匹前後の猫を抱えていました。
里親を探す余裕もない毎日でした。
仕事は手一杯な上に、
家に帰ってからも
大勢いる愛猫達のお世話に追われ
仕事と猫一色の日々を
延々と10年以上
続けていたということです。
こんな毎日を続けているとどうなるか。
予期せず訪れた空虚感
それは突然やってきました!
とある講習会に参加していた時、
何の前触れもなく、
私、何でこの仕事をしてるんだっけ?
私はずっとこの仕事を続けるのかなぁ
私はどこに向かってる?
私は一体何をやってるんだろう、、。
こんな思いが
どんどん自分の中から湧いてきて、
講習会の内容が全く頭に入って
こなかったのです。
今までこんなことは
考えたこともなかったので、
自分でも驚き、焦りました。
この時は
何故こんな思いを抱いてしまうのか
まるで分からなかったのですが、
時間が経つにつれてその理由が
おぼろげに分かってきたのです。
本当の意味で愛猫達に目を向けていなかった?
自分を顧みて気付いたこと
自分の現状に気が付くのに
少し時間はかかりましたが、私に
アドバイスをくれた人の助けを得て、
次のことが見え始めてきました。
物理的、精神的に限界に達している
頑張り方の方向性を間違っている
周囲にばかり目を向けている
自分を大切にする方法を知らない
頑張らないと不安と焦りにかられる
強い思い込みで愛猫達に接している
世の中の価値観や常識と
言われるものを
自分でも正しいと信じて
突き進んできた結果が
このなんともいえない、
何かがポッカリ抜け落ちて
しまったような
虚しい感覚だったのです。
これは全く想像もしなかった感覚で、
開業以来、初めて私の前に
立ちはだかる得体のしれない
大きな壁になりました。
この時から今まで経験したことのない
壁への向き合い方を
探ることになります。
その中で少しずつ浮かび上がってきたもの
それは、
私は自分の本当の気持ちを
ないがしろにしていたのでは?
ということでした。
この段階では、自分の本音が何なのか
気付くことができませんでした。
それほどに強い観念や思い込みの中で
自分を支え過ごしてきたということです。
過去を振り返ることで
私の「意識」の向け方に
特徴があることが分かってきました。
それは強烈な「ねばべき思考」であり、
そのことで自分を追いつめている
ということでした。
私のこの意識の向け方のパターンは
仕事や社会との関わり方
だけではなく、
愛猫達に対しても
まったく同じだったのです。
余裕のなさはネガティブなことを引き寄せる?
自分の内面を見つめている内に
興味深いことに気付きました。
それは、愛猫達が次々と
病気にかかっていく時期と
私の仕事の多忙な時期が
かなり一致しているということです。
同じことを、保護すべき犬猫と
遭遇するひん度に重ねてみたところ、
これもかなり一致している。
当時、望んでもいないのに、
次から次へと保護すべき
コンディションの悪い猫達に
遭遇していたのです。
猫達のことだけに関わらず、
私の過去を振り返ると
殆どの出来事に同じことがいえる
と、気付きました。
”まだまだ頑張らないといけない!”
と思っていると、
歯を食いしばるほど
頑張らなくてはならない
出来事が本当に起きてしまう
そんなことが山ほどある!
と思い当たり、なるほど、
ひょっとすると思考や意識の使い方は
そういう仕組みになっているのかも
しれない、、、。
そんな風に思えてきたのです。
次々と愛猫達を看取って見えてきたこと
愛猫達が私に気付かせたかったこと
一歩引いたところから
自分を見つめて気付いたこと
それは、
私の愛猫達は、
私の息苦しさをそのまま
反映していたのではないか。
彼らはそんな私に対して、
彼らの命を通して早く気付いて!と
訴えかけていたのではないか。
この視点で、自分以外、
特に私のお客様である
飼い主さん達に目を向けてみたところ
多くの場合、
当てはまる気がするのです。
愛犬、愛猫達が飼い主さんに
求めていること、
その本質がこの時初めて
分かったような気がしました。
自分にやっていたことを無意識に愛猫達にもやっていた
これはとても抽象的な
捉え方なのかもしれません。
受け止め方に温度差もあるでしょう。
でも、愛犬、愛猫を家族の一員として
迎えていらっしゃる
飼い主さんの多くには
この考え方は伝わる、
分かって頂けるだろう
と、思っています。
私はずっと自分をねぎらうことを
後回しにしていました。
自分のことは最後で当たり前、
まず、やるべきは仕事、
お客様にご迷惑をかけないこと
そして、保護活動と飼い猫のケア。
自分に目を向ける大切さについては
考えたこともなかったですし、
それほど重要だとは
思っていなかったのです。
愛猫達に対しても然り、
私が見ていたのは彼らの外側、
具合の悪さや病気そのものでした。
愛猫達のあるがままの姿であったり、
気持ちを見ているようで
実は見ていなかった、、、。
まるで自分にそうしているように。
ペットシッターという仕事を通して伝えたいこと
「安心感」を感じ、そして与えてあげたい
心から私が望むこと、
それは保護活動ではなく、
愛猫達と楽しく暮らすこと、
心身をすり減らして働くことではなく
Give&Takeのほど良い距離感で
お客様との関係を築いて
喜んで頂くこと。
自分のためだけに時間を使うことを
許し、それを心から楽しむこと。
これらを一言で表すなら
「安心」できる環境に身を置いて
好きなことをしつつ、日々を
ゆったり過ごすことなのです。
これが私の真の心の声なのです。
愛猫達も心から
安心できる環境の中で
過ごさせてあげたい。
死の場面が訪れても
穏やかな気持ちで送ってあげたい
このことに気付き、抵抗なく
受け入れられるようになるまでに
少し時間がかかりました。
ですが、時間がかかっただけに、
私の本音・本質だと思えたのです。
本音に気付いて得られた変化
自分の本音を受け入れ、
至らない自分を認め、
意識を変えていったことで
起きた変化は
とても大きなものでした。
私を縛るものの多くから
解放された感覚は
想像以上の解放感でした。
肩の力がどっと抜けたのです。
この大きな変化は
愛猫達がいてくれたからこそ
得られたのです。
亡くなったあの子達が
教えてくれたのです。
大げさだなと思う方も
いるかもしれません。
ですが、感染病でないにも関わらず、
愛猫達の体調不良や看取りが
次々と続いていた当時を振り返ると
あの子達が私にサインを送り続けて
いたとしか思えないのです。
私は愛猫達との繋がりを
観念的な見方でしか捉えて
いなかったのかもしれません。
意識に変化が起きてからも
何匹かの愛猫を看取りましたが、
不思議と以前のように
動物病院に通いつめたり
激しい後悔にさいなまれることが
ほぼなくなりました。
その理由の一つに
猫の生理学を学び、自然療法の勉強を
進めていることもありますが、
それよりも、
愛猫達との関わり方が変わったことが
大きく関係していると感じています。
愛犬、愛猫達の真の役割とは
愛犬、愛猫達は人間界の多くのことを分かっている!?
飼い主の元にやってきたペット達、
彼らが望んでいること。
それはもしかして、
飼い主の幸せなのでは?
そんな視点から、私の愛猫や、
お客様とペット達の関係を見つめると
深く納得してしまう場面を私は数多く
経験してきました。
愛犬、愛猫達とのお別れに纏わる不思議な
エピソードを飼い主の皆さんの多くは
一度は見聞きしたことがあるのでは
ないでしょうか?
エピソード1. T様宅の猫 てんちゃん
T様は私が開業した翌年から
お付き合いのあるお客様です。
てんちゃんは堂々とした雰囲気を
漂わせる少しおっかない?猫ちゃん
でした。触れさせてくれるなんて
もっての他。
てんちゃんは、T様ご夫妻に
とっても大事にされていました。
そんなてんちゃんが晩年を迎えた頃、
T様からご依頼があり、打ち合わせに
出かけた時でした。
高齢になったてんちゃんの体調は
気になるけれども、どうしても
出かけなくてはならないとのことで
お世話内容の確認をさせて頂いた時、
おもむろにてんちゃんがテーブルに
乗ってきたのです。
そんなこと、これまでには絶対に
なかったことなので
「あれ?珍しいな」と思っていると
なんと、てんちゃんは
そのテーブルの上で急に倒れ、
そのまま息を引き取って
しまったのです。。。
飼い主のT様はもちろんのこと、
私も激しく動揺したのですが、
後で振り返って
「あー、そうだったのか」と
思ったのです。
てんちゃんは分かっていたのだと。
T様が一人の時に逝ってしまうと
耐えられないだろうなということを。
だから、亡くなるタイミングを
探していたのだと。
実際、T様はその場で泣きじゃくり、
お仕事に行かれていたご主人も
すぐに帰って来られました。私は
ご主人が帰って来られるのを待って
帰らせて頂きました。
こんな経験は後にも先にもこの時だけ
ですが、てんちゃんのT様への想いが
伝わってきて泣けてしまいました。
エピソード2. S様宅の猫 とらぼるたくん
S様も開業当初からお付き合いのある
お客様です。ですから飼い猫の
とらぼるた君のことも15年位お世話を
させて頂いていました。
とらぼるた君は高齢になってから
鼻腔内リンパ腫を患いました。
飼い主のS様は女性ですが、
とんでもなく多忙な方で月の半分
家を空けられることも
珍しくなかったのですが、
とらぼるた君のために、
西洋医学だけではなく、東洋系の
治療法もご自分でお調べになり、
漢方薬やサプリメントを使って
リンパ腫を寛解させるほど熱心に
ケアをされたのです。
そんなとらぼるた君も最晩年を迎え、
体調が不安定になり、自宅を空ける
ことに後ろ髪をひかれるように
なった頃、
これもまたなんという巡り合わせか、
世の中がコロナ禍となり、
S様はご自宅で仕事ができる環境に
なったのです。
コロナでもない限り、ずっと家にいる
という状態はS様にはあり得ない
ことで、しばらく在宅で仕事をされる
ことになったのでした。
もうお分かりですね。
とらぼるた君は、S様が毎日家にいる
という状況を待っていたかのように
S様に見守られながらこの世を去った
のです。
とらぼるた君は、とても頭のいい
猫ちゃんで、自分の置かれた状況を
よく分かっていて、私は彼を
”留守番のプロ”と呼んでいたほど
でした。
聞き分けの良い子で手を煩わす
ことのない猫ちゃんだったのです。
「ママが出張している時に
僕が逝ってしまったらママは
自分を責めるかもしれないでしょ?
そんな想いはさせないよ!」
とらぼるた君のそんな声が
聞こえてくるような最期でした。
飼い主さんを本当によく見ている。
そう思えてなりませんでした。
これらのエピソードを
偶然と受け止めるか、
必然と受け止めるかは
飼い主さん次第です。
でも、偶然ではなく、
これまで愛犬、愛猫達と築いてきた絆が
そうさせたのだと思った方が
ペット達も飼い主さんも救われ、
暖かい気持ちに包まれると思うのです。
飼い主の意識(無意識も含む)、
それは愛犬や愛猫達に
私達が思う以上に
伝わっているのです。
最後に
飼い主さんと愛犬、愛猫達との理想の関わり方
動物に関わる仕事に就き、この世界で
ずっと動物達を見つめてきて
ようやく気付いたこと、
とても感覚的なものですので
伝わりづらさもあるかもしれません。
でも、私には確信があるのです。
ペット達は飼い主さんの心模様を
敏感に感じ取っているということに。
以前の私であれば気付けなかった
この思いを、今後は日々の
ペットのお世話を通して、
直接、間接的に伝えていく
ということをやっていきたい
と思っています。
飼い主さんに幸せであって欲しい。
何故ならそれを
愛犬、愛猫達は望んでいるから。
この視点でペット達に
目を向けてみると日常の中では
つい見落としてしまう
彼らの様々なサインにより気付ける
のではないかと思います。
ペットはパートナーといわれて
久しいですが、
「本質は双方の幸せ」だと気付くことに
私は15年以上もの年月が必要でした。
動物達と向き合い続けてきた結果
見えてきたもの、
それは「人」でした。
これまで私が得た知識や技術、
経験でサポートさせて頂くことも
一つの形です。
今、私ができることの根っこに
「愛犬、愛猫達は飼い主の鏡」
「飼い主の幸せが彼らの幸せ」
この思いを直接・間接的に注ぎ込み、
”全体を見ることの大切さ!”
このことを肝に銘じて
日々の仕事に活かしていきたい
そう思っています。
最後までお読みくださり
ありがとうございました。
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