病名を知っても、猫は良くならなかった——治療に「参加する」飼い主の話

この記事は2022年に書いたものを現在の視点からリライトしたものです。
10年ほど前、私の家は猫の病気のデパートでした。
保護猫として迎えた子たちが、次々と重い病気にかかっていきました。
腎臓病、糖尿病、慢性口内炎、甲状腺機能亢進症、FIP、各種の癌——。
我ながら、よくこれだけ経験したと思います。
その頃の私は、病院に通い続けることが治療のすべてだと信じて疑っていませんでした。
獣医師に勧められた投薬、皮下注射、サプリメント。それをこなすことがケアだと思い込んでいた。
でも今振り返ると、片手落ちだったと感じています。
病名がわかると、なぜか安心してしまう
ペットの具合が悪くなると、多くの飼い主さんはまず病名を知ろうとします。
これは自然な反応です。正体がわかれば、手の打ちようがある気がする。
ただ、病名がわかった瞬間に「あとは先生にお任せ」というモードに入ってしまうことがあります。私がそうでした。
診断名を聞いて安心し、処方された薬を飲ませ、定期的に通院する。
それで十分だと思っていた。
でも、病気には必ず原因があります。
その原因に目を向けないまま症状だけを抑えていても、根本のところは変わらない。
獣医師の治療の多くは対症療法——つまり、出てきた症状をコントロールすることが目的です。
それは必要なことですが、「治す力」そのものは、その子の体の中にしかないのです。
投薬等だけでは届かない場所がある
当時の私に足りなかったのは、治療と並行して「その子が持っている力を引き出す」という視点でした。
全身の状態を上げる。
ストレスを和らげる。
ちゃんとその子に目を向ける。
今思えばどれも難しいことではないのですが、当時は忙しさもあって、そういったことが頭にありませんでした。
投薬とサプリが済んだら「今日のケアは終わり」——そんな感覚だったと思います。
人間に置き換えてみると、わかりやすいかもしれません。
薬を飲んで、点滴を受けて、でも睡眠もとれず、ストレスも抱えたまま、誰にも気にかけてもらえない。
それで回復するかというと、なかなかそうはいかない。
動物も同じです。
治療を受けながら、同時に「その子の自力が活きる場」を作ってあげることが、飼い主にしかできない役割だと今は確信しています。
自宅でできることは、思っているより多い
では具体的に何をするか。
特別なことは必要ありません。
体を冷やさない
水をしっかり飲ませる工夫をする
食欲や排泄の変化に気づく
できるだけ穏やかな環境を保つ
——こういった積み重ねが、自然治癒力を支えます。
ただ一点、伝えておきたいのは「全部やろうとしなくていい」ということです。
シッターとして多くの飼い主さんと関わってきて気づいたのは、「正しいケア」を伝えても、その人の生活や性格、そしてペット自身の個性に合っていなければ続かないということです。
続かないケアは、やらないのと変わらない。
だから私が考えるようになったのは「この人にできること、続けられること、この子に合っていること」から始めるということ。
完璧にやることより、その子と飼い主さんにとって無理のない形で続けられることの方が、ずっと意味があると思っています。
「治療に参加する」ということ
獣医師は病気のプロです。
でも、その子の日常を知っているのは飼い主さんだけです。
どんな環境で過ごしているか
最近何かストレスになることはなかったか
食欲や様子の微妙な変化
——こういった情報は、飼い主さんにしか集められません。
それを獣医師にフィードバックしながら治療を進めることが、「治療に参加する」ということだと思っています。
ペットシッターは、飼い主さんの自宅に入らせてもらう仕事です。
その環境がペットの健康にどう影響しているか、現場で感じてきたことを共有することができます。
治療そのものはできません。でも、飼い主さんが「何からできるか」を一緒に考える橋渡しならできる。
治してあげたいという気持ちは、どの飼い主さんも同じです。
その気持ちを、もう少し具体的な行動につなげるお手伝いができればと思っています。
2022年に書いたブログに改めて手を入れて、この記事は過去の私の救済になりました。
自分を整えなければ、大切なもの、基本的なことが近くにあっても見えなくなる。
そんな気付きを新たにした記事です。
この思いをもって今後も現場に臨みたいと思っています。









