猫に多い慢性腎臓病。
常に死因の上位にあがっています。シニア期になると知らない間に進行している腎臓の劣化。それに伴って出てくる様さまざまな症状、それはどういったもので、何故そうなってしまうのか、そして自宅でできる簡単なケアについて、一人の猫飼いとして、また多くの猫ちゃんのお世話をさせて頂いてきたペットシッターの立場からイラストを多用してまとめています。
ペットシッター目線からみた猫の腎臓病
猫の慢性腎臓病(腎不全)については、プロ中のプロである獣医さん達がネット上でたくさん情報を提供されています。
原因から、症状、最新または一般的な治療法まで詳しく解説してくださっています。
ペットシッターである私はそのことについては詳しく触れません。
関心があるのは、動物病院の治療以外に、「自宅でできる簡単なケアはないものか」ということです。
仕事柄、たくさんの猫達に接しますし、その中でも腎臓を患う猫ちゃんはとても多いのです。
また、私は以前保護活動もしていましたので、多い時は20匹くらい猫を飼っていました。その飼い猫達も晩年になると半分くらいの子が腎臓を悪くして通院生活が続きました。
ペットシッターのお世話の現場で、どんな治療やケアをしているのかを見ていみると、その多くは通院、または自宅での皮下点滴であったり、毒素やリンを吸着するお薬を飲ませることだったり、腎臓ケアの療法食を食べさせたり、血管拡張剤を飲ませるなどで、いわゆる対症療法です。
中にはこれらの治療で状態をキープしたり、改善傾向になる猫ちゃんもいますが、それは稀なケースで、やはり時間の経過と共に状態は徐々に悪くなり、だんだん体重が落ち、貧血気味になったり、吐き気をもよおしてきたり、便秘になったりして、最終的には輸液を吸収する力もなくなり死に至ります。
私達飼い主にできることは、死に至るまでの過程をできるだけ先延ばしして、尚且つ、その期間のQOL(生活の質)を保ちつつ、その子らしく日々を過ごさせてあげることです。
そうするためには、腎臓病について理解する必要がありますので、下記にまとめました。
猫の腎臓の役割
こうしてまとめると、腎臓がいかに多くの役割をもって、日々身体を動かすために働いてくれているのかが分かりますね。これは人もペットも全く同じです。
役割を知ることによって、普段、何を心がけてあげれば腎臓をケアできるのかもおのずと見えてくるのではないかと思います。
猫の腎臓に必要なもの
腎臓に必要なものは、大きく4つ。
炭水化物
「炭水化物」って意外かもしれませんが、腎臓は働く際に熱を必要とする臓器なのだそうです。
炭水化物は即エネルギーになるので、タンパク質や脂質よりも腎臓にとっては必要な栄養素となります。
だからといって敢えてキャットフードとは別に炭水化物を食べさせる必要はないと思います。
療法食はその点を配慮してありますし、腎不全になっていなくても、シニア猫のフードはタンパク質をおさえてありますので、おのずと炭水化物の割合が高くなっているからです。
酸素と血流量
「酸素と血流量」については、相関関係があります。
腎臓が働きが悪くなってくると、腎臓からのエリスロポエチン(ホルモン)の分泌が減り、赤血球をつくる能力が低下し貧血になります。
これを「腎性貧血」といいます。
赤血球は体のすみずみにまで酸素を運ぶ役割を持っています。
貧血で身体が酸欠気味になると、心臓がフル稼働して全身に酸素を送ろうとして大きな負担がかかってしまいます。
血流を良好に正常に保つためにも、腎臓だけではなく、すべての臓器にとって酸素は必要不可欠な材料といえるのです。
では、どうするかというと、簡単なところでは「運動」です。
運動をすると息があがって多くの酸素を取り込もうとしますよね。
猫じゃらしを使って、猫ちゃんを運動させてあげましょう。おのずと血流もよくなります。
高齢の猫ちゃんや運動嫌いの子は、「全身のマッサージやブラッシング」をするのもいいですね。これによって、身体の血行がよくなります。
水分
私は数年前からペットの自然療法の勉強を続けているのですが、その先生が何度も繰り返しおっしゃっていることがあります。
「水」をしっかり飲むことは、薬を飲むこと以上にとても大事なことですと。
腎不全の猫ちゃんは、悪くなりつつある腎臓になんとか頑張って機能してもらおうとしてたくさんお水を飲むようになるのですが、飲んでも飲んでも水分が足りないので、治療の一つとして皮下点滴を行います。
人もペットも体の70%位は水分が占めています。
このことからも、水分が足りなければ腎臓のみならず、身体中に悪影響がでてしまうということです。
とはいえ、放っておくとワンちゃんと違って積極的にお水を飲もうとしないのが猫ちゃんです。(;’∀’)
そこで、冬場は冷たいお水ではなく、「温かいお湯」を用意したり、「ウェットフード」を毎日食べさせたり、「流水」が好きな子には流水を飲ませたり(蛇口の閉め忘れに注意です!)、さまざまな形の器にお水を入れて「面白がって飲むよう」にしたりしてあげるという一工夫が大事になります。
猫の心臓から腎臓への基本的な流れ
このイラストはややマニアックかもしれません。(;’∀’)
ここまで知っておく必要はないかもしれませんが、こうしてみると、腎臓と心臓は当たり前ですが、密接に繋がっているということ。
どちらかの調子が悪くなると、互いに影響を与え合ってしまうということ。
先述した「血流量」を良好に保つために、水分摂取や運動がなぜ必要かということが分かって頂けるのではないかと思います。
腎臓って、働き者なんですよね。
猫の腎臓病の原因と自宅でできる対策
腎臓が悪くなる原因が分かると、それに応じて、では何をやってあげれば良いのかということが浮かび上がってきます。
こうして見てみると、自宅でできるケアが意外とあることに気付きます。
また、これらの対策はそれほど難しいことではなく、日常、ちょっとした配慮でやってあげら簡単なものです。
ポイントはこれを「継続する」ということ。
また、腎不全であるなしに関わらず、元気なうちからやってあげられることばかりで、それらは予防にもつながるということです。
「腎臓病」と病院で診断されてしまうと、とても難しく、厄介な病気になってしまった。と思ってしまいがちです。でも、こうやって紐解いていくと、
実は原因は普段の生活の中にあって、またそれはちょっと配慮することで予防してあげられることだった ということに気付けるはずです。
かつての私もそうでしたが、腎不全と聞くと、病院でしか治療できないものと考えがちです。
でも、病院でできる治療は、対症療法が主となり、根本的なアプローチではありません。
東洋医学や自然療法を取り入れている動物病院であれば身体全体を補う治療もしてもらえるかもしれませんが、そういう動物病院は徐々に増えてきてはいるものの、まだまだ少ないのが現状です。
動物病院での治療に加えて、上記に挙げた自宅でできるケアをやってあげることによって、猫ちゃんも心地よくなるでしょうし、身体へのストレスが減ることによって、良い兆候が現れることもあるかもしれません。
そして、猫ちゃんとの関係も更によくなることでしょう。これはきっと猫ちゃんだけでなく、飼い主さんのメンタル面にも良い影響を及ぼすはずです。
まとめ
身体の器官や臓器は繋がっている。
分かってはいても何故かこのことを忘れてしまいがちなのですが、腎臓は肺、心臓、脳、肝臓、腸とも関連が深い臓器です。
腎臓病になった場合、まずは下記のことをやってみてください。
- 水を積極的に飲ませる。その工夫をする
- 特に下半身をマッサージする(冷やさない)
- 現在食べさせているフードの内容を見直す
自宅でできるケアの最後にあげた「腸内環境を整える」については、ここ最近、「腸活」に注目している私としては、声を大にして飼い主の皆さんにお伝えしたいことがありますので、また別の記事で書かせていただきますね。
最後までお読みくださいましてありがとうございました。
【本ブログは猫にフォーカスして書きましたが、腎臓に関する諸情報は猫だけではなく、人や犬にも多くの場合当てはまります】