「なんか違う気がする」を大切にしてほしい

※この記事は2022年3月に書いた記事を2026年現在の私の視点からリライトしたものです。
当時のタイトルは「飼い主さんの直感は大事!セカンドオピニオンを積極的に求めましょう」でしたが、その考えは今も変わっていません。ただ、今回は過去の自分の視点に獣医師をはじめ、私たち飼い主も持つ”思い込みフィルター”という概念を加えて書き直しています。
獣医師の診断に対して、
「なんか違う気がする」
そんな感覚を持ったことはありませんか?
私はあります。
しかも一度や二度ではありません。
ただ、誤解してほしくないのは、私は獣医師を疑えと言いたいわけではないのです。
むしろ長年たくさんの獣医師と関わってきた今だからこそ、診断が違うこと自体は珍しいことではないと思うようになりました。
今日は、私がセカンドオピニオンについて考えるようになったきっかけを書いてみます。
オロオロするだけだった頃
まだペットシッターとして開業する前、私は一人の猫の飼い主でした。
高齢の愛猫が腎不全で急激に体調を崩したことがあります。
休日だったため、開いている病院に駆け込みました。
そのとき猫は後ろ足が動かなくなっていました。
最初の病院で言われたのは「血栓」の可能性でした。
当時の私は知識も経験も乏しく、「死んでしまうのではないか」と不安でいっぱいになりました。
ところが翌日、かかりつけの獣医師に診てもらうと診断はまったく違いました。
急激な体調悪化による一時的な虚脱症状。
結果的には後者の診断が近く、その子はその後もしばらく穏やかに過ごすことができました。
今振り返ると、あの頃の私にできたのはただただ心配し、オロオロすることだけでした。
調べることも十分にできない。
質問する気持ちの余裕もない。
他の意見を聞くという発想もない。
でも、それらは当然といえば当然だったと思います。
大切な家族が苦しんでいるとき、人は簡単に冷静さを失います。
調べるようになって見えてきたこと
ペットシッターとして経験を積むにつれ、少しずつ見える景色が変わっていきました。
ある若い猫が、麻酔後の検査で尿糖と血尿を指摘され、「糖尿病の疑い」と診断され、療法食を出されたことがありました。
けれど、その子はまだ一歳前後の若い猫です。
私にはどこか腑に落ちないものがありました。
そこで自分なりに調べ、仲間にも相談し、別の病院で意見を聞いてみました。
すると、尿糖はストレスによる一時的な反応ではないかという見解が示されました。
その後、尿糖は消失し、血尿は特発性膀胱炎でストレス源が消えたことで治っていきました。
保護した子猫の骨折でも同じような経験があります。
最初の病院では断脚を勧められました。
しかし別の病院では保存療法で様子を見るという判断でした。
結果として、その子は断脚することなく元気に歩けるようになりました。
こうした経験を通じて気づいたことがあります。
それは、
「調べること」と「判断すること」は別の作業だということです。
情報は集められます。
けれど、その情報が目の前の子に当てはまるかどうかを見極めるのは簡単ではありません。
だからこそ、経験のある人に相談することや、別の獣医師の意見を聞くことに意味があるのです。
診断が違うのは珍しくない
以前の私は、診断が違うと
「どちらかが間違っている」と思っていました。
でも今は少し違います。
長年現場を見ていると、人は誰でも自分なりのフィルターを通して物事を見ていることが分かります。
獣医師も同じです。
これまで診てきた症例。
成功体験。
失敗体験。
得意分野。
学んできた環境。
そうした積み重ねが診断に影響します。
それはまったく悪いことではありません。
むしろ経験を積むほど自然に生まれ、身に付いてくるものです。
だから私は今、診断が違うこと自体にあまり驚かなくなりました。
大切なのは、その判断にどんな理由があるのかを理解することだと思っています。
飼い主にもフィルターがある
そして実は、飼い主にもフィルターがあります。
「この病気ではあってほしくない」
「手術は避けたい」
「この先生は優しいから大丈夫」
そんな願いや不安が、知らず知らずのうちに判断に影響します。
私自身も何度も経験してきました。
だからこそ、不安なときほど一人で抱え込まないでほしいのです。
調べること。
観察すること。
質問すること。
必要であれば、経験のある人に相談すること。
それは決して獣医師を疑う行為ではありません。
より納得できる選択をするためのプロセスです。
私がクッションになれること
病院で説明を受けたけれど頭が真っ白になった。
ネットで調べれば調べるほど不安になった。
この治療で本当にいいのだろうか。
そんな相談を受けることがよくあります。
もちろん私は獣医師ではありません。診断も治療方針の決定もできません。
でも、
「今わかっていることは何か」
「まだわからないことは何か」
「次に何を確認したらよいか」
を一緒に整理することはできます。
不安が強いとき、人は視野が狭くなります。
だからこそ、間に一人入ることで見えてくるものがあります。
私はそんなクッションのような役割であれたらと思っています。
「なんか違う気がする」を大切に
もし診断や治療方針に違和感を覚えたら、その感覚を無視しないでください。
もちろん直感だけで判断する必要はありません。
調べる。
質問する。
相談する。
別の意見を聞いてみる。
その上で納得して選ぶ。
それが大切だと思います。
獣医師が病気を診る専門家だとしたら、飼い主はその子の日常を知る専門家です。
どちらか一方ではなく、両方の視点が合わさったとき、より納得できる選択につながるのではないでしょうか。
現在は選択肢そのものが増えている
私がシッター業を始めた2003年頃と比べると、動物病院の数は大きく増えています。
全国の動物病院数はこの20年で約1.4倍(※注)になりました。
選択肢が増えれば、考え方や治療方針の違いに出会う機会も増えます。
だから私は、セカンドオピニオンは特別なことではなく、ごく自然な選択肢の一つだと思っています。
大切なのは、どの先生を信じるかではありません。
自分で調べ、考え、質問することです。
質問することで獣医師の引き出しが開き、新しい視点が見えてくることもあります。
獣医師に任せきりになるのでもなく、ネット情報だけを信じるのでもない。
一緒に考えながら、その子にとって納得できる選択を探していく。
私はそんな姿勢が大切なのではないかと思っています。
※注
農林水産省の調査データに基づくと、日本国内の動物病院数の推移は以下の通りです。
・2004年: 9,245施設
・2024年: 12,846施設
・増加率: 約39%増(約1.4倍)









