人の医療の分野だけでなく、動物の医療の分野でもよく耳にするようになってきた「セカンドオピニオン」。
私はペットシッターという職業柄、飼い主の方々からペットの健康相談をしばしば受けます。
お話を伺っていて、飼い主さんの話し方やペット達の表情や雰囲気から”納得できていない”という空気を感じることがあります。
「しっくりくる」という感覚。大事だなーと思っています。
何故なら、飼い主さんが病気や健康のことをしっかり理解して目の前のペットと向き合った方が早く結果が出るような気がするためです。
”しっくりこない”ということは、つまり”違和感がある”ということです。
この記事では具体的事例を挙げて「飼い主さんが感じる感覚を軽視しないことは大切です」ということと、セカンドオピニオンを求めることをためらわないでください!ということについて書いています。
症状が長期間に渡り改善しないケースの一例
この事例は、あるお客様から通院代行のご依頼を頂いた時のお話です。
その猫ちゃんは、長毛種ではないのですが、毛の深いタイプの猫ちゃんで、背中に大きな毛玉がいくつもできてしまったことと、頻尿・血尿の症状がなかなか治らないとのことで飼い主さんが動物病院に連れて行かれました。
毛玉のカットにあたっては、鎮静をかけるので、事前に血液検査と尿検査を行ったそうです。
猫ちゃんは無事にカットも終えて、さっぱりして毛玉の不快さからは解放されたのですが、別の問題が出てきました。
検査の結果、尿から「糖」が出たそうなのです。
出されたお薬は、膀胱炎用の止血剤と抗生物質、そしてちょっと驚いたのですが、炭水化物をおさえた療法食も出されていました。これは尿糖対策だと思います。
獣医さんからは一週間後にまた検査をしたいので、連れてきてくださいと言われたそうですが、仕事の都合上、なかなか時間を取れない飼い主さんが病院に連れて行けたのは数週間後、その時も尿糖・頻尿・血尿は変わらず。
その後、さらに数週間経過した後、飼い主さんがどうにも病院に連れて行く時間が取れないとのことでご依頼を頂き、私が通院を代行させて頂くことになりました。
しっくりこない時はセカンドオピニオンを!
私が連れて行った時も、やはり猫ちゃんの尿からは糖が出ていました。
そしてまた、止血剤と抗生物質と糖をコントロールするフード。。。
私の違和感は、1歳前後の猫ちゃんなのに、糖尿病を疑って療法食を出しているという点と頻尿、血尿がなかなか治らないのに、また同じ薬が出たという点でした。
麻酔を使った場合、「尿糖」が出る場合もあるそうなのですが、こちらの獣医さんはそれを念頭に診ていらっしゃるようでした。(でも初回の検査の時点で糖は出てましたよね!?)
もちろん、可能性はゼロではありませんし、糖尿病であることも考えられなくはないのですが、なーんか、猫ちゃん全体から伝わってくる感じと獣医さんの見解が私の中でマッチしないのです。
泌尿器系の問題への対処法に対しても回復の兆しがなかったので、この点もモヤモヤが残っていました。
長期間抗生物質を飲ませることは腸内細菌に悪影響を与えてしまうためです。
数値として出ている結果に物申すということではないのですが、“数値だけ”を見ていませんか?という感じがぬぐえなかったのです。
全体を診ている感じが伝わってこなかったので、何かを見落としているような感覚を消せませんでした。
それに、こちらの獣医さん、隠しようもなく私の発する質問を煙たがっていらっしゃいました。(^-^;
話をそらそうとするのが見て取れたので、これはセカンドオピニオンコースだなと診察を受けながら内心決めていたのでした。(笑)
今回のセカンドオピニオンの結果は?
猫ちゃんのなかなか治りきれない頻尿・血尿の問題を抱えつつ、「尿糖」の問題も気になっていたので他の獣医さんの見解も聞いてみようと思い、後日飼い主さんの了解を得て別の病院へ行き、経過をお伝えして再度検査をし、詳しく診て頂きました。
その結果、こちらの動物病院では獣医さんのおっしゃることがしっくりきたのです。
何が違ったかというと、端的に言えば、獣医さんの経験と人柄につきるのだろうと思います。
あとは、話を聞く姿勢。そして、私との“相性”です。
二件目の獣医さんは取り立てて優しいとか、物腰が柔らかいとかそんな方ではないのです。
淡々と検査結果を踏まえて私の質問に答えてくださいました。
でも反応したのです!私の直感が。
多分、こちらの先生の見解の方がこの子(診察した猫ちゃん)の全体から受ける印象と症状にしっくりくると。
診て頂いた結果、猫ちゃんの「尿糖」は強いストレスがかかって一時的に出たものであるということ。
強いストレスとは背中にできた大きないくつもの毛玉でした。
猫ちゃんにとっては、思うように毛づくろいもできないし、毛は引っ張られて痛いしで不快でしかなかったのでしょう。
何故そういう見立てになったかというと、こちらの獣医さんは数件の類似したケースの猫ちゃんの診察をしたことがあったからということでした。
そしてもう一つの気がかりごとである、頻尿と血尿については特発性の膀胱炎でしょうとのこと。
猫ちゃんには割とよくあるのですが、膀胱に細菌がいなくても炎症を起こして頻尿になったり血尿が出てしまうケースがあるのです。
特発性膀胱炎に関しては、猫ちゃんの年齢から考えてもその内治るでしょうとのことでしたが、念のために、専用のフードを出して頂きました。
それからしばらく経って、この猫ちゃんのシッティングに伺った際、猫ちゃんの頻尿・血尿の症状はなくなっていたのでした。
療法食で改善したということも考えられますが、毛玉の不快感と投薬から解放されたということも回復の後押しをしたのではないかと私は考えています。
特発性膀胱炎は原因が特定しづらい厄介な症状なのですが、ストレスは大きな要因になっているようです。
猫はとても繊細な動物なのです。
セカンドオピニオンを求めて大正解!
検査の数値はもちろん大事ですし、身体の状態を把握するのに大いに役に立ちます。
私自身、検査結果を元に調べものをしたりしていますから決して軽視してはいません。むしろ重視しています。
ですが、検査結果が全てを表す訳ではないのです。
そのことを二軒目の獣医さんは経験からご存知だったのでしょう。
セカンドオピニオンを求めて本当に良かったと思いました。
オマケとして、毛の深いこの猫ちゃんはその後、こちらの動物病院で鎮静なしでカットして頂けるようになったのです。
猫ちゃんの性格を見て、トリマーさんが鎮静なしでシャンプー・カットできるタイプの猫ちゃんですね!とおっしゃってくださったのでした。
前の病院は猫ちゃんの場合は自動的に鎮静をかけることになっていたので、この点もとてもラッキーでした。
気軽にセカンドオピニオンを求めましょう。
最近はネットの口コミの評価で病院やお店を決める人も増えています。
私はといえば、こと動物病院に限っては口コミは殆ど参考にしていません。
何故なら、それは書き手の主観だからです。
ですから読んでいると真逆の評価の書き込みがあるのも珍しいことではありません。
もちろん、口コミコメントを否定する訳ではなく、何も情報がないよりも判断材料の一つにはなりますので、口コミを参考にすることについて「絶対NO」等のような意見を持っている訳ではありません。
ただ、動物病院選びは飼い主さんにとって大事な選択になります。
何を基準に選ぶか、
技術なのか、経験なのか、人当たりの良さなのか、
相性なのか、距離なのか、人気の高さなのか、
専門性なのか、プロ意識なのか etc. etc…
いろいろあると思います。
かかりつけ医を持つことは大事なことではありますが、獣医さんにもやはり得意な分野とそうでない分野があります。
それに当たり前ですが、私もふくめて誰もが完璧ではありません。
あれこれと獣医さんに質問をするのを躊躇う飼い主さんもまだまだ多いことは承知していますが、できるなら可愛い愛犬、愛猫、小さなペット達のために質問することを遠慮しないでいただきたいと思っています。
そのためには情報も必要ですので、できる範囲で集めてください。分からないことは尋ねれば良いのです。
質問の仕方によっては、煙たがられることもあるかもしれませんが、心ある獣医さんであれば皆さんからの質問を当然のこととして受け止めてちゃんと答えてくださるはずです。
獣医さんの技術もとても大切なことではありますが、獣医さんと飼い主さんとの相性も同じくらい大切です。
何故なら、病気を治すのは獣医さんの治療の技術やお薬だけではないからです。
突拍子もないことを書いていると思われるかもしれませんが、愛するペットの病気に向き合う飼い主さんの在り方も治療に際して大きな要素を占めてくるからです。
そのためにも獣医さんとの関係が良好である方が望ましいと私は考えています。
まとめ
今回はひとつの具体的な事例を挙げて、セカンドオピニオンを求めることの大切さを書かせて頂きました。
セカンドオピニオンを求めることを躊躇わない飼い主さんもいれば、そうでない方もいらっしゃるでしょう。
病院選びも何を基準にするかはそれぞれ異なりますので、一概にはいえませんが、迷った時は、私達ペットシッターや、ペット関連の仕事をしている人に聞いてみるのも一つの方法です。
私達は同業者とも繋がっていますので、ある程度情報を持っていますし、共有することもあります。
ワンちゃんの飼い主さんはお散歩仲間に聞いてみるという方法もありますね。
保護活動をされている方からワンちゃん、猫ちゃんを譲り受けた方は保護団体さんに尋ねてみるのも良いでしょう。
保護団体さんもたくさん情報を持っていらっしゃいます。
獣医さんはもちろんですが、私達ペット関連業者も動物が好きでこの世界に入りましたので、ベースとなる想いは飼い主さんと何ら変わりません。
目の前の愛するペット達の日々の幸せを願って繋がりを持つことができれば嬉しく思います。