ペットシッターの現場を勝手に分析(全3/5回)-知識が増えるほど迷う理由-


現場で陥る「知識の罠」
ペットシッターにとって、知識はとても大切です。
私自身、学ぶことで何度も助けられてきました。
でも現場に立ち続けていると、ある違和感が生まれます。
知識が増えるほど、判断が難しくなる瞬間がある。
学ぶほど迷う。
知っているほど決められない。
この感覚を、私は「知識の罠」と呼んでいます。
知識は現場を助ける
まず前提として。
知識は必要です。
学び続けることはとても重要です。
・病気の知識
・行動学
・栄養
・環境
・介護、看護
知識があるから救える場面は確実にあります。
例えば、呼吸の仕方に違和感を覚えたケース。
全身で頑張って呼吸しているように見えるときは、心臓や肺のトラブルが疑われます。
こういう場面では東洋医学や自然療法を考える前に、西洋医学での受診が必要な可能性が高い。
迷わず飼い主さんに伝えます。
判断が間違って批判されても構わないという覚悟で伝えます。
知識が、判断を後押ししてくれる瞬間です。
それでも迷いは増えていく
不思議なことに、知識が増えるほど迷いも増えていきます。
経験を重ねるほど判断が楽になると思っていたのに、むしろ難しくなる瞬間があります。
それは、なぜか。
可能性が増えすぎる
猫の腹部に硬いしこりを感じたとき。
まず思い浮かぶのは乳腺腫瘍です。
予後が良くないケースがあることも知っています。
だからこそ迷います。
・積極治療
・緩和ケア
・自然療法 etc…
治療の方向性は一つではありません。
知識があるほど、選択肢が増えていきます。
現状を理解してもらうため、知っている治療法をできる限り伝えます。
でも、その選択は飼い主さんに委ねられます。
知識は判断を助けながら、同時に判断を重くします。
情報が増えすぎた時代
近年は情報そのものも増えました。
本、ネット、SNS、そしてAI。
誰でも簡単に情報に触れられる時代です。
飼い主さんがどの情報をどう受け取るかは、人それぞれです。
一方向の情報に強く影響を受ける方もいます。
違う角度から説明しても、なかなか本意が伝わらないこともあります。
きっと獣医師も同じ悩みを抱えているのではないかと思います。
現場では、こうしたやり取りが日々積み重なっています。
ペットシッターが陥る「知識の罠」の正体
知識の罠とは、「正解がある前提」で考えてしまうこと。
現場の判断の多くは
・完璧ではない
・不確実
・暫定的
それでも決めなければいけません。
一介のシッターがこんなことを考える必要はないのかもしれません。
ですが、伝えなくては!伝えなければならない!というケースもあるのです。
判断の迷いから抜け出すためのヒント
知識を減らす必要はありません。
むしろ学び続けることは大切です。
必要なのは、知識との付き合い方を変えること。
知識は
正解を出すためではなく、選択肢を広げるためにある。
そう考えると、判断は少し軽くなります。
現場でのベスト
最終的に頼るのは
・観察
・経験
・状況
そして「今できる最善」を選ぶこと。
完璧な正解ではなく、現時点での最善。
それで十分な場面は多くありますし、多くの場合、私達の想いは飼い主さんに伝わります。
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ここまで書いてきたことは、20年現場に立ってようやく言語化できたことです。
次の記事では、この仕事を20年続けて見えてきたものを振り返ります。


