今回も「猫の日常ケア&よろず相談会」にご参加頂いた飼い主さまから頂いたご相談内容をご報告させて頂きます。
イベント報告をブログに記録として残す目的のひとつに、同じようなケースに向き合っている飼い主さんの参考情報として活用して頂きたいという想いがあります。
動物のことに限らず、一つのテーマに対して考え方はいろいろありますので飼い主さんご自身の感覚に“しっくりくるかどうか”ということを目安にしてお読み頂ければと思っています。
こちらの飼い主さまは、弊店の以前からのお客様です。
これまでにも時々シッティングの際にご相談を受けており、その都度対応させて頂いておりましたが、高齢の猫ちゃんということもあり、多くの猫の飼い主さんにも思い当たることや、参考にして頂けることがあるかもしれませんので、この場でシェアさせて頂きます。
テーマは「猫の巻き爪」と「腎臓ケア」について。
ご相談頂いたキッカケは、猫ちゃんの肉球に爪が刺さってますーー。(;’∀’)
「ど、どうすればいいでしょう?」ということでした。
まず、猫の爪について。
高齢猫ちゃんを飼ったことのある方はご存じだと思いますが、猫も老いてくると運動量が落ちて、万事ものぐさ?になります。
若い頃は飼い主さんを悩ますほどあちこちでやっていた爪とぎも億劫になって、気が付くと巻き爪になっているということも割とあります。
巻き爪の状態であれば、まだなんとかなりますが、肉球に爪が刺さっていることもしばしばあるのです。
肉球に刺さってしまっている場合、猫ちゃんが嫌がらなければ、人間の爪切りを使って切ってあげることもできるのですが、ご相談者さんの猫ちゃんは嫌がって切らせてくれないとのことで、動物病院に連れて行かれました。
まぁ、この方法が一番安全ではあります。
ペットシッターを長くやっていて思うのですが、猫って食事へのこだわりもなかなかのものですが、爪とぎの材質に対しても好みがあるなと感じています。
タワーに巻いてあるロープや、麻でできたもの、ダンボール、木材で作ってあるものや、ありがたくないけれども壁紙、柱、ソファーなどなど、いろんな種類があり、最近はおしゃれな爪とぎもたくさんあります。
ここでお伝えしたいことは、特に高齢になってからは爪とぎの材質をコロコロと変えないという点です。
材質が変わってしまうと、それが爪とぎだと認めてくれないこともありますし、爪を研ぐことに興味を失ってしまうということもあるからです。
猫飼いあるあるですが、良かれと思って奮発して買ったベッドを使ってくれなかったり、お気に入りの秘密基地のダンボールの箱を新しいものにしてあげると入らなくなったりしますよね?
飼い主さんとしては、とっても残念な気持ちに包まれてしまうのですが、ここはやはり猫ちゃんの気持ちを尊重してあげて欲しいと思っています
高齢になると、適応力が落ちたり、頑固?になったりしますので、できるだけ無用の変化を与えず、ストレスの少ない日常を提供してあげてください。
猫ちゃんは、思わぬところでストレスを溜めてしまうものなのです。
ただ、誤解のないようにお伝えしますと、”ストレスの少ない日常”と”退屈なこと”とは必ずしも同じではありません。
高齢になっても適度に言葉をかけたり、スキンシップやブラッシングをしたり、刺激は与えてあげてくださいね。その理由は人間と全く同じです。動物達はいくつになっても飼い主さんのことが大好きで、ちゃんと見ていますので。
次に、猫ちゃんの腎臓ケアについて。
さて、ご相談者の猫ちゃん。
肉球に刺さった爪の処理をしてもらうついでに、血液検査をしてもらい、その結果、前回の検査結果と比較して、BUNとクレアチニンの数値が上がっていて、これ以上数値が上がると皮下点滴をしなくてはならないと獣医さんに言われたそうです。
当座の対応としては、療法食に変えて様子を見るということになるのでしょう。
ここからは20匹以上の飼い猫の看取りの経験を踏まえた私の持論です。
病気を治したい、症状を少しでも軽くしてあげたい、できるだけ長生きしてほしいというのは、飼い主さんとしては当たり前の心情です。
このことは私もよく理解しています。
私が今回のご相談者さんにお伝えしたことは、QOL(猫ちゃんの日々の暮らしの質)をどう考えるかは飼い主さん次第ですので、飼い主さんご自身で決めてくださいねと前置きをさせて頂いた上で、次のことをお伝えしました。
療法食のみを与えて数値を下げることを頑張ってみるのも一つの方法ですが、それによって、食欲が落ち、猫ちゃんが日々の楽しみを失ってしまうことは全体的に生きる意欲を下げてしまう可能性もあります。
私だったら、猫ちゃんの食欲等を見つつ、食が進まないようであれば、好物を与えることも検討します。
療法食以外を与えることによって、数値が改善しなかったとしても私は日々の楽しみを取り上げることはしませんし、特に高齢になった子には最後まで好きなように生きて欲しいと思っています。
動物達にとって「食べる」ということは最大の楽しみといっても過言ではないほど大切なことで、実際、療法食をセーブして好物を与え始めると元気になった猫ちゃんを何匹か見ています。
動物達の生きるチカラというのは数値では計り知れないものがあるなと思っています。
ご相談者さんは、猫ちゃんの年齢も考慮され、日々を楽しく過ごして欲しいと考えていらっしゃいましたので、自宅ケアの方法をお伝えしました。
自宅でやってあげられる腎臓の機能を高めるケアには次のようなものがあります。
①食べすぎを防ぐ
②血行不良改善
③冷えの改善
④適切なフード選び
⑤水分摂取
⑥腸内環境を良好に
上記を一つ一つ解説すると、とんでもない長文になりますのでここでは割愛しますが、ご相談者の飼い主さんには何故これらのことが必要なのかということについて口頭で丁寧にお伝えしています。
身体全体と猫ちゃんの個性に目を向けて心身の双方をケアできるのは飼い主さんだけです。
腎臓だけのケアでは状態が改善しないケースが多いので、悪くなった臓器だけにフォーカスせずに、全体を見てもらうようお伝えしました。
飼い主さんの生き方、考え方、死生観はペット達に投影されます。
「今起きていること」だけに翻弄されず、未来から「今」を捉えると家族であり、パートナーでもあるペット達に何をやってあげたいのかということが見えてくるのかもしれませんね。